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東京地方裁判所 昭和34年(行)57号 判決 1964年3月26日

前橋市才川町四四一番地

原告

合名会社山一製糸所

右代表者

代表社員 山本一郎

右訴訟代理人弁護士

松岡末盛

東京都千代田区内幸町一丁目二番地

被告

関東信越国税局長

広瀬駿二

右指定代理人

検事 加藤宏

法務事務官 山田弘一郎

大蔵事務官 平山孝一

中村久三郎

金子秀雄

右当事者間の昭和三四年(行)第五七号所得金額再調査決定取消等請求事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

原告の昭和三〇年二月一日から昭和三一年一月三一日までの事業年度分法人税に関し、被告が昭和三四年一月二〇日付をもつて原告の審査の請求を棄却した決定は、所得金額四六一、七六七円を超える限度において、これを取り消す。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立

一、原告

1  原告の昭和三〇年二月一日から昭和三一年一月三一日までの事業年度分法人税に関する審査請求を棄却した被告の昭和三四年一月二〇日付決定を取り消す。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

二、被告

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二、原告の請求原因

一、原告は、玉糸、生糸の製造、販売を業とする合名会社であるが、昭和三〇年二月一日から昭和三一年一年三一日までの事業年度(以下昭和三〇年事業年度という。)分法人税につき、所得金額を金三五七、八九八円として、昭和三一年三月三〇日所轄の前橋税務署長に確定申告をした。

ところが、同税務署長は、昭和三二年六月二九日付で、原告の右事業年度分所得額は金三、八四七、五〇〇円である旨の更正をして、同年七月五日原告に通知した。

これに対し、原告は、昭和三二年七月三一日付再調査申請書と同年一〇月二八日付再調査申請訂正願とをもつて、同税務署長に再調査の請求をしたところ、同税動署長は、昭和三二年一〇月二九日付をもつて、更正処分の部を取り消し、所得額は金二、三八四、八〇〇円であると決定して、その頃原告に通知した。

さらに、原告は、同年一一月二八日被告に審査の請求をしたが、被告は昭和三四年一月二〇日付で審査請求を棄却する旨決定して、同月二九日原告に通知した。

二、しかしながら、原告の昭和三〇年事業年度の所得額に関する再調査決定、従つてこれを正当と認めて原告の審査請求を棄却した被告の決定は、所得額算出の基礎となつた在庫品(そのうち原料繭)の額の認定を誤つた点で違法である。よつて、その取消しを求めるため本訴に及んだ。

第三、請求原因に対する答弁と被告の主張

一、請求原因に対する答弁

原告の請求原因第一項の事実はいずれも認めるが、同第二項は争う。

二、被告の主張

1  原告の昭和三〇年事業年度におまる所得額は金二、七四六六九一円で、その算出根拠は、別紙損益計算書被告主張額欄記載のとおりである。これによれば、原告の同事業年度分所得額は、再調査決定額金二、三八四、八〇〇円を上廻るから、再調査決定を容認して原告の審査請求を棄却した被告の決定は適法である。

2  別表第一損益計算書の被告主張額の中、原告が本訴で争う在庫品について、以下被告の計算を明らかにする。

在庫品金一二、二五九、〇四〇円の内訳は、次のとおりである。

原料繭 一一、四二二、二五四円

糸 七八六、六六六円

副産物 三三、一二〇円

燃料 一七、〇〇〇円

この中、原料繭以外については原告は争わないから、原料繭の期末在庫金一一、四二二、二五四円の算出根拠を明らかにする。原料繭の在庫は倉庫会社に寄託されたものとその他のもの(原告保管分)とがあるが、内訳は次のとおりである。

(一) 倉庫会社に寄託された原料繭 二、四三〇貫四〇〇匁

(1) 上毛倉庫株式会社寄託分

倉荷証券番号 品種 数量

五四六 上繭 四六六、五貫

五四七 玉繭 一一八、八

〃 伸繭 一六六、二

五九八 伸繭 四九〇、〇

六四〇 玉繭 八四、一

〃 伸繭 三八〇、六

(2) 群馬中央倉庫株式会社寄託分

倉荷証券番号 品種 数量

四二 上繭 一四〇、〇貫

二四四 同 三一九、〇

二七九 同 二六五、二

右(1)(2)の数量、品種は、各倉庫会社の帳簿により確認したものである。

(二) その他の在庫原料繭 六〇三貫五二〇匁

出納別 品種 数量

受入分

仕入 伸繭その他 一、〇三一、三五貫

倉出 同 九〇二、八〇

払出分

消費 伸蘭その他 一、〇九六、五三

売上 同 九四、一〇

倉入 同 一四〇、〇〇

差額(在庫) 同 六〇三、五二

右の算出にあたつては、原告の帳簿により、昭和三〇事業年度の最終月である昭和三一年一月中の仕人、消費(すなわち製糸に使用うれた原料繭)及び売上(すなわち原料繭を繭のままで売却したもの)の数量を確認し、倉庫会社の帳簿により、同月分の倉出及び倉入の数量を確認し、仕入及び倉出を受入分とし、消費、売上及び倉入を払出分とし、受入分と払出分とを差し引き計算することによつて、期末における倉庫会社寄託分以外の在庫の数額を算定したものである。この算出方法において、昭和三一年一月中の受払いについてのみ差引計算したのは、昭和三〇年一二月末日現在の在庫(倉庫に寄託されたもの以外の在庫)が零であることを前提としたもので、原告に有利な算出方法を採用したものである。

(三) 以上(一)(二)の在庫高の評価額 金一一、四二二、二五四円

品種 数量 最終仕入単価 金額

上繭 一、一九〇、七〇貫 四、一五〇円 四、九四一、四〇五円

玉繭 二〇二、九〇 四、〇五〇 八二一、七四五

伸繭 一、六四〇、三二 三、四五〇 五、六五九、一〇四

合計 三、〇三三、九二 一一、四二二、二五四

右の評価に際しては、原告に有利に、(二)の在庫数量はすべて最低種の伸繭とみなして計算した。

なお、以上に掲げた繭の数量は、時期的にみて生繭は存在しないので、いずれも乾繭の数量である。

第四、被告の主張に対する原告の答弁及び主張

一、別表損益計算書の被告主張欄掲記の科目のうち、原告は、在庫品の額を争い、したがつて、利益金及び合計額を争うものであるがその余の各科目についての被告の主張額はすべて認める。原告の争う各科目の正当額は、それぞれ、別表原告主張欄掲記のとおりである。なお、繭の各品種の最終仕入単価についても、被告主張額を争わない。

二、原告は結局、被告主張の在庫品(しかも、在庫品内訳原料繭、糸副産物、燃料のうち原料繭のみ)の額のみを争うものであるが、以下原料繭の額について、被告主張額の不合理性と原告主張額の正当性とを説明する。

(一)  被告は、原料繭の在庫高を倉庫会社の帳簿等に基づいて算出しているが、次に述べる理由で、倉庫会社の帳簿等によつては、正確な在庫高を算出することができない。

(1) 倉庫会社は、原告が原料繭を買い入れるために融資を受けた銀行の寄託を受けて、原告のため原料繭を保管し、原告がこれを倉出するには、銀行に倉出を希望する繭の代金相当額を払い込み、銀行から倉出票をもらつて、これを倉庫会社に呈示するのでなければ、倉出はできないことになつていた。しかし、実際には原告の資金繰りの関係から、銀行に代金相当額の払込みができないときにも、特に倉庫会社の倉庫係に頼んで、内密に倉出をしてもらつたり、銀行の倉出票に記載された数量以上の倉出を受けたり、また倉出票には低品種の繭の倉出が記載されているのに、高品種のものの倉出を得たりなどしていた。しかし、これらはいずれも正規の取引ではないから、倉庫会社の帳簿に記載はされなかつた。昭和三〇事業年度末にも、このようにして、倉庫会社の帳簿には保管されているように記載されていないから、実際には原告が持ち出していたものが相当量存在していたから、倉庫会社の帳簿の記載を基礎とする算出方法によつて原告の在庫高を算出することは、原料繭の種類、数量とも不可能である。

(2) また、被告は、倉庫会社寄託分以外の原料繭の在庫高を算出するに当り、昭和三一年一月分だけを取り上げ、昭和三〇年一二月末日現在の原告の手持原料繭を零として計算し、右計算方法は原告に有利に扱つたと主張する。

しかし、原告は、当時右に述べたような方法で倉庫会社から内密に倉出した分については、資金に余裕を生じときや他かな多量に原料繭を購入したときに、銀行に資金を払い込んで倉出票を受領し、これを倉庫会社に呈示するだけで、実際には繭を受領せず、また他からの仕入繭を倉庫会社に持ち込むことによつて、すでに内密に倉出した分を補顛して、銀行の帳簿に記載された寄託数量と倉庫会社の実際数量とを合致させることとしていたが、このような内密の倉出とその補顛等の事実は、ことの性質上原告帳簿に記載されていなかつたため、たとえば、或る月に帳簿上は倉出しを受けたこととなつているが、実際は、すでにその前月に内密に倉出しを受けていた数量に見合う数量をその月に倉出したように記載したに過ぎないものもあり、また、実際には、補顛のため倉入しながら帳簿上はなんらの倉入の記載をしていたものもあるというような状況であるから、特定の一カ月についてだけ、帳簿上の記載に基づき当該月末における正確な在庫実数を算出することは不可能であり、したがつて、昭和三〇年一二月末日現在の在庫高を零として、昭和三一年一月分の帳簿の記載に基づき被告主張のような方法で在庫数量を算出しても正確な在庫実数は勿論、原告に有利な数量も算出することはできない。

(2) そこで、原告の期末原料繭の在庫高を正確に算出するには、期首在庫高に仕入高を加え、これより製糸に使用したものと繭のまま売却したものとを差引く方法によるべきところ、原告の昭和三〇事業年度におけるこれらの数額は次のとおりである。

上繭 玉繭 伸繭

期首在庫高(乾繭) 一、五八八、六〇〇貫 一八〇、〇〇〇貫 一、一一〇、八〇〇貫

仕入高合計(乾繭) 八、七六三、八〇〇 三、九七四、二九二 六、八九四、九六二

売上高(繭のまま売却したもの)合計(乾繭) 三、八六四、六九九 〇 一九五、二三〇

消費高(製糸に使用したもの)(乾繭) 五、五九七、〇〇三 三、九五一、八九〇 六、四七一、〇五二

期末在高(乾繭) 八九〇、六九八 二〇二、四〇二 一、三三九、四八〇

右の算出に当つては、生繭を乾繭に換算する換算率は四〇%によつたが、これは大多数の製糸業者が準拠する換算率で、永年の経験に基づくものである。

以上によつて算出された期末在庫高に、最終仕入単価を乗じて、原料繭の在庫類を算出すると、次のとおり金九、一三七、三三〇円(端数切捨て)である。

品種 数量 最終仕入単価 金額

上繭 八九〇、六九八貫 四、一五〇円 三、六九六、三九六、七円

玉繭 二〇二、四〇二 四、〇五〇 八一九、七二八、一

伸繭 一、三三九、四八〇 三、四五〇 四、六二一、二〇六、〇

合計 二、四三二、五八〇   九、一三七、三三〇、八

したがつて、原告の在庫品の額は、右原料繭に、争いのない糸副産物、燃料を加えた合計金九、九七四、一一六円が正当額である。

(三)  なお、在庫原料繭に関する被告の主張が不合理であつて、原告の主張が正当であることは、製糸に使用した繭の数量と生産糸の割合からも明らかである。

すなわち、昭和三〇事業年度における原告の使用原料繭一六、〇一九貫九四五匁と生産糸六、三五〇貫七三七匁との割合は、三九・六%となり、極めて高率であつて、原告の在庫高に記載洩れのあり得ないことは、明らかである。

もし、被告の主張するように原料繭の在庫量が三、〇三三貫九二〇匁だとすれば、原告主張額との差額六〇一貫三四〇匁は製糸に使用されなかつたことになるから、使用原料繭合計は原告主張額から右数量を差引いた一五、四一八貫六〇五匁となり、生産糸との割合は四一、二%の高率となり、経験上到底考え及び得ない率であるから、被告の主張は明らかに不合理である。

(四)  また、在庫品の計上洩れとして、更正ではその顔を金二、七二九、三〇八円と認定し、再調査決定ではこれを金一、二六六、六〇八円と減額し、本訴においてまたこれを増額して主張しているが、この経緯に、それ自体被告の主張が不合理であることを示すものである。

第五、証拠関係

一、原告

甲第一ないし第一〇号証を提出し、証人瀬下高次、同品川壮二郎、同矢島秋雄の各証言及び原告代表者本人尋問の結果を援用する。

乙号各証の成立は不知。

二、被告

乙第一号証の一、二、同第二号証の一ないし三、同第三、第四号証の各一、二、同第五、第六号証を提出する。

甲第四号証、同第八ないし第一〇号証の成立を認め、援用する。その余の甲号各証の成立は不知。

理由

一、本件の争点は、期末原料繭の数量にあるところ、被告の主張によれば、倉庫会社に寄託されたものについては、倉庫会社の帳簿によつて期末在庫高を算出し、その他の在庫については、昭和三一年一月中の原告の仕入、売上及び消費に関する帳簿の記載と倉庫会社の倉出、倉入関係の帳簿の記載とにより、同月分の仕入と倉出数量を加算したものから、売上、消費及び倉入数量の合算額を差し引く方法により期末における原告保管高を算出し、両者を合算する方法によつて期末における原料繭の在庫高を算出したというのである。

そこで、右のような算出方法が合理的なものであるかどうかを検討することとする。

証人瀬下高次、同品川壮二郎、同矢島秋雄の各証言及び原告代表者本人尋問の結果によれば、係争事業年度当時、原告は、原料繭の仕入に当り、多くは銀行融資によつて仕入資金を調達していた関係上、銀行からの借入金により仕入れた原料繭を倉庫会社に寄託して倉荷証券の発行を受けたものが銀行のため担保として提供され、原告が倉庫会社から原料繭を引き取るためには、銀行に対して、引取り繭相当額の金員を払い込み、銀行より倉出票を得て、これを倉庫会社に交付することが必要であつたが、上毛倉庫株式会社と原告との間に古くから取引関係があり、倉庫係員と親しかつたところから、原告において、原料繭が製糸作業のため必要なのに、倉出票をもらうため銀行に払い込むべき手持資金を欠くような場合には、原告は、上毛倉庫株式会社係員に頼んで、銀行に内密に倉出票なしで、または倉出票に記載された数量以上ないしこれに記載されたのと異なる品種の原料繭を引き取り、後に、資金上余裕の生じたときに銀行に金員を払い込んで、倉出票をもらい、これをすでに引き取つた分にあてる趣旨で倉庫会社に交付し、または、銀行を通さないで自己資金で仕入れた原料繭を倉庫会社に持ち込むことによつて、すでに引き取つた原料繭について補顛していたが、このようなことは正規の取引ではなかつたから、倉庫会社の帳簿にも、原告の帳簿にも記載されなかつたことが認められ、右認定を覆するに足る証拠はない。

このように内密に倉庫会社から持ち出される原料繭の数量とその清算関係については、上毛倉庫株式会社の当時の係員であつた前記品川、矢島各証人は、いずれも数量は僅少であり、清算も短期日の内に行われていたと供述するが、同証人等の立場よりして、右供述は直ちには措信し難く、むしろ、証人瀬人高次の証言及び原告代表者本人尋問の結果によれば、相当大量の原料繭が内密に持ち出され、その決算も相当期間を要し、原告の事業年度末日である一月三一日には、一応完全に清算するため、一月中に前記の方法により補顛に努め、数量的には倉庫会社の帳簿面と実際額は一致していたが、品種までは完全に合致させることができなかつたと認められ、他に右認定の妨げとなる証拠は存しない。

以上の認定事実によれば、倉庫会社寄託分の認定事実によれば、倉庫会社寄託分の認定は、数量に関する限り、一応合理的とはいえても、品種の点まで正確とはいえず、さらに昭和三一年一月は、係争事業年度の最終月であるから、同月末に、倉庫会社の帳簿上の実際の現在高を合致させるため、同月中に帳簿上は倉出になつていながら、実際には倉出せず、また実際には倉入れしながら、帳簿上に倉入と記載されていないものもあるわけであつて、原告保管分については、被告の認定方法により、とうてい正確な数量を把握することのできないことは原告主張のとおりと認められる。(のみならず、被告は、係争事業年度中を通じては、原告の仕入、売上、消費関係の帳簿の正確性を否認しつつ、昭和三一年一月分についてのみ、特段の主張、立証もしないで、これら原告帳簿を信用し、これによつて期末原料繭を算出しているのであつて、明らかに不当な認定方法というべきである。)

二、以上の次第、被告の審査決定における期末原料繭の認定額、従つて昭和三〇事業年度の所得の認定額は合理的なものとは認められず、かえつて、原告主張の所得額が正当額と認められることは、次に判断するとおりである。

すなわち、原告は、本訴において、期末原料繭は、上繭八九〇貫六九八匁玉繭二〇二貫四〇二匁伸繭一、三三九貫四八〇匁(いずれも乾繭)であり、その評価額は、合計金九、一三七、三三〇円と主張し、成立に争いのない甲第四号証、同第八ないし第一〇号証、証人瀬下高次の証言により真正に成立したと認められる甲第一ないし第三号証、同第五ないし第七号証並びに証人瀬下高次の証言及び原告代表者本人尋問の結果によれば、原告の昭和三〇事業年度における期首原材料、仕入、売上、消費数量及びこれによつて算出される期末原材料は、原告主張のとおりであると認められ(なお、すでに認定したとおり、期末においては倉庫会社保管分は、品種別はともかく、数量的には、倉庫会社帳簿と合致しているものであるが、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第一号証の一、二によれば、倉庫会社保管期末原料繭は、総計二、四三〇貫四〇〇匁と認められ、これと原告が主張する期末原料繭の総計二、四三二貫五八〇匁との差額が二貫余であることと、期末における原料繭は倉庫会社保管分を除き原告会社保管分は二貫程度である旨の瀬下証人の証言及び原告本人の供述とを考え合せると原告主張額の正当性がいつそう強くうなづかれる。)、当事者間に争いのない最終仕入単価を乗じて、期末原料繭額を算出すれば、原告主張どおり、金九、一三七、三三〇円であつて、これに、当事者間に争いのない糸、副産物、燃料の期末額を加えた金九、九七四、一一六円が期末在庫の正当額となり、これに基づき、所得額を算出すると、別表原告主張額欄記載のとおり、原告の昭和三〇事業年度所得額は、金四六一、七六七円と認められ、右所得額は、原告の確定申告額金三五七、八九八円を超えるものであるから、被告の審査決定における所得額の認定は、右所得金額の限度では正当であるが、これを超える限度で、違法であり、取消しを免れない。

よつて原告の請求を右の限度で是認し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九十二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 白石健三 裁判官 浜秀和 裁判官 町田顕)

別表

昭和三〇事業年度損益計算書

科目 被告主張額(円) 原告主張額(円)

(一) 利益の部

1 生糸売上 九一、〇二七、〇二八 同上

2 繭売上 一七、七四四、〇九八 〃

3 屑物売上 二、一四二、八一五 〃

4 雑収入 二一八、二四六 〃

5 配当金 九、四五六 〃

6 在庫品 一二、二五九、〇四〇 九、九七四、一一六

7 合計 一二三、四〇〇、六八三 一二一、一一五、七五九

(二) 損失の部

1 繰越原料 一一、四三二、八九〇 同上

2 繰越製品 六九五、九八〇 〃

3 繰越屑物 一一三、三〇〇 〃

4 繰越燃料 七〇、〇〇〇 〃

5 生糸仕入 一三、八五三、四五七 〃

6 生繭仕入 三五、五八二、七九四 〃

7 乾繭仕入 四〇、〇五一、六八四 〃

8 屑物仕入 八七〇 〃

9 給料手当 六九六、二七〇 〃

10 賃金手当 四、八九五、七二九 〃

11 賞与 二〇二、七〇〇 〃

12 電燈電力 一四八、八七六 〃

13 燃料費 一、二六二、五一五 〃

14 運賃 三五三、九七九 〃

15 消耗品 五二七、二一六 〃

16 事務費 五八、七五五 〃

17 通信費 一四七、一九九 〃

18 修繕費 七一九、三六三 〃

19 接待交際 三七八、〇九〇 〃

20 旅費交通 二三六、五六五 〃

21 組合会費 一二六、四八六 〃

22 公租公課 一〇三、四七五 〃

23 法人税 〇 〃

24 地方税 三〇〇 〃

25 加算税 〇 〃

26 厚生費 一二八、七九二 〃

27 負担金 二六二、二一六 〃

28 販売費 一、一五八、四六二 〃

29 割引利息 一、八一七、二八三 〃

30 賄費 二七九、〇五三 〃

31 倉敷料 四三三、〇六三 〃

32 火災保険 九八、三三三 〃

33 購繭費 七二三、九六二 〃

34 手数料 二五、九一四 〃

35 自動車賃 二三四、七三五 〃

36 水道費 一〇六、九七〇 〃

37 乾燥費 一九七、四〇九 〃

38 加工賃 五五七、八六〇 〃

39 雑給与 七五、二七六 〃

40 宣伝広告 一六、五〇〇 〃

41 清算先物売買損 二二五、五〇〇 〃

42 奨励金 一〇四、七四八 〃

43 貸倒金 九三六、〇一六 〃

44 減価償却 九〇三、四六八 〃

45 雑費 二二八、七四四 〃

46 値引損金 一九三、三三四 〃

47 原料副費 九三、八五〇 〃

48 指導費 八四、〇一一 〃

49 車輛売却損 一一〇、〇〇〇 〃

50 利益金 二、七四六、六九一 四六一、七六七

51 合計 一二三、四〇〇、六八三 一二一、一一五、七五九

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